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【入門】 投資助言・代理業に登録する際の職務経験の要件:⑤システム担当者が求められる事例    前回までの記事で、①~④の投資助言・代理業に登録する際に、必ず必要となる人的要件の解説をしてきましたが、今回は、投資助言・代理業者としてシステムトレードや自動売買、人工知能等を用いたサービスの提供をお考えの場合、システム担当者が求められることがある点についてご紹介します。 ◇システム担当者に求められる人的要件  このような事例は、あまり多くないのでシステム担当者に求められる職務経験について明言することは難しいのですが、扱うシステムや事業規模によって条件が変わってくるとが予想されるものの、システム担当者としての十分な職務経験として認められるためには、他の人的要件等を参考に考えますと扱うシステムに関する保守管理経験がおそらく 3年 程度求められることになるかと思われます。  加えて、こうしたシステム担当者の設置が求められるような事例では、システムに障害が発生した際に顧客に損害が発生する恐れがあること等からシステムの内部規定の策定、システムの安全性確保、システムの運用状況の管理、システムの障害発生時の対応に関する規定等を定めておくことが求められると考えられ、登録に際しての審査もより厳格になると思われますので、登録前の事前準備がより重要となります。  現在、人工知能が役所や企業等の業務を補助するために採用される事例が増加していることから、将来的には、投資助言・代理業でも業務に人工知能を用いることが一般化してくものと思われます。その結果、投資助言・代理業者がシステム担当者を置くこともより一般化するものと思われますので、この分野の人材獲得競争もそれに伴い激化していくことが予想されます。      コレクト行政書士事務所                    特定行政書士   矢ノ下孝信 関連ページ ・ 投資助言・代理業に必要な人的要件とは? ・ 投資助言・代理業に登録する際の職務経験の要件:①経営者 ・ 投資助言・代理業に登録する際の職務経験の要件:②分析・助言担当者 ・ 投資助言・代理業に登録する際の職務経験の要件:③コンプライアンス担当者 ・ 投資助言・代理業に登録する際の職務経験の要件:④内部監査担当者 ・ 投資助言・代理業に登録するための人的要件まとめ
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【入門】 投資助言・代理業に登録する際の職務経験の要件:②分析・助言担当者  投資助言・代理業に登録するためには、「有価証券の価値等又は金融商品の価値等の分析に基づく投資判断の助言を行う者として、有価証券や金融商品の価値等に関する知識及び経験を有する者が確保されていること」(「金融商品取引業者向けの総合的な監督指針Ⅶ. 監督上評価項目と諸手続(投資助言・代理業)体制審査の項目より引用)が必要です。  分析・助言担当者となる役員や使用人には、金融商品の価値等に関する知識や経験が求められます。また、登録の際には、次ような職務経験や能力が求められます。 ①登録を予定している会社での助言対象金融商品(助言対象金融商品が株式の場合は株式に関する分析・助言経験、FXの場合はFXに関する分析・助言経験が必要)に対する最低 3年 程度の実務経験が必要となります。 ②行おうとするビジネスの内容や規模にもよりますが、例外的に金融商品取引業者での実務経験が十分でない場合でも、保有資格等で業務に関する知識を証明することで実務経験の不足を補うことができる場合もあります。  「金融機関のリテール部門での職務経験はあるのですが、この職務経験は、分析・助言担当者としての経験として認められるでしょうか?」というご質問をいただいたことがありますが、リテール部門での経験は、主に営業に関する職務経験になりますので、この職務経験のみでは、分析・助言担当者に求められる職務経験として認められずらいのが現状です。  関連する論点として、リテール部門での職務経験をお持ちの方は、証券外務員一種又は二種資格を保有しておられることと思います。かつては、証券外務員資格を保有している場合は、実務経験が無い方でも分析助言・担当者に就任できていたようですが、投資助言・代理業の登録自体が非常に困難となり、人的要件においても実務経験が何よりも重視される現在では、証券外務員資格を保有しているだけでは、主たる分析・助言担当者として認められるのは非常に困難となっています。  加えて、近年よくいただくご相談としては、個人投資家として経験を積まれた方が、個人投資家としての経験があるので、分析・助言担当者になれないかというご相談をいただくことがあるのですが、こうした方の場合も、個人投資家としての経験のみでは、分析・助言担当者に求められる職務経験
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  【入門】 投資助言・代理業に登録する際の職務経験の要件:①経営者 ◇経営者に求められる職務経験の要件  ここでは、投資助言・代理業に登録する際に求められる経営者の職務経験の要件について解説していきます。  経営者には、経営能力や資質、コンプライアンスやリスク管理に関する知識や経験が求められます。加えて次のような職務経験や能力が求められます。 ①金融商品取引業者の役員としての経験。経験年数は、最低 3年 程。合算でも可です。 ②金融商品取引業者の役員ではないが、他業種での役員経験がある場合、資格取得や講習会への参加、外部の専門家のサポートを受けられる体制の構築等によって、金融商品取引業に関する知識や経験を補完することで登録を受けることは可能。 ③役員経験は無いが、金融商品取引業者での管理職としての経験がある場合は、経営に関する資格取得やセミナー参加で知識や経験を補完することで登録を受けられる場合もあります。しかし、全く会社(自営業でも可)の経営経験も、金融商品取引業者での業務従事経験も無い方の場合は、登録を受けることはできません。  「管理職としての経験はあるのですが管理職としての経験では職務経験として認められないのでしょうか?」というご相談をいただいたことがあるのですが、ここで求められているのは、経営者として投資助言・代理業を経営していく能力になりますので、管理職としてのマネジメント経験のみの場合、この経営能力という観点からは、不十分ということになってしまいます。  経営者に金融商品取引業者での業務従事経験はあるものの、会社経営の経験の無い場合、自営業でもよいので、実際にFP等の投資助言・代理業への登録の必要のないビジネスを経営する経験をしていただくと経営能力があることの証明にできます。  一方、経営者に金融商品取引業者での業務従事経験が無い場合、投資助言・代理業に登録するためには、登録審査が厳格化した2023年以降、 2名 以上金融商品取引業者での業務従事経験のある従業員を雇用する必要があります。  金融商品取引業者での業務経験が無い経営者が、金融商品取引業者での業務従事経験のある従業員を1名も確保できない場合、登録可能性が無いと判断され、登録審査に進むことすらできませんのでご注意ください。 ◇補足:法人の常務に従事する役員に求められる職務経験の要件  補足に
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【入門】投資助言・代理業に必要な人的要件とは? ◇投資助言・代理業に登録している事業者数と近年の動向  投資助言・代理業に登録している事業者数は、金融庁の公表している資料によれば、2024年3月時点で990事業者となっており、過去5年間での事業者数の推移は、ほぼ横ばいでした。  今後も経済情勢の大きな変動が無ければ、登録事業者数は、多少の増減が予想されるものの1000事業者前後で推移するものと思われます。  新規登録をしている事業者の傾向としては、近年、金融庁が登録手続きを英語でも可としたことで、外資系運用会社等の資本と人材の豊富な事業者の新規登録も増えてきてきます。  一方、2023年以降は、規制当局が新規事業者の参入抑制方針を示しており、こうした方針を受け、投資助言・代理業への新規登録は非常に困難であると言わざるをえません。 ◇投資助言・代理業に必要な人的要件  投資助言・代理業の登録に必要な人的要件に関しては、お客様から最も多くいただくご質問の一つです。  必要な人的要件は、行おうとする業態により異なりますが、いかなる業態にも必要なのは、①経営者、②分析・助言担当者、③コンプライアンス担当者、④内部監査担当者の①~④になります。  これらの①~④に加えて、一部の業務を行うには、⑤システム担当者が求められることもあります。  このように書きますと最低でも4人は必要なのかと思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、例えば①経営者と②分析・助言担当者を同一人物が兼ねることもできます。従いまして、行おうとする業態によっては2人以下での登録も認められる余地があるということです。  では、実際に一人でビジネスをしている方が、①~④の全てを兼務して登録ができるかと申しますと、この方が行おうとしておられるビジネスが少数の投資経験豊富なクライアントを対象とする場合でも、投資助言・代理業を含めた金融商品取引業者に高度なコンプライアンス体制とリスク管理体制の整備が求められる現在では、極めて困難であると言わざるを得ません。  ①~⑤には、金融商品取引業者及び登録金融機関(証券会社以外で有価証券関連業の一部を行うことができる金融機関のこと)での実際の実務経験が必要になります。  金融商品取引業者及び登録金融機関での実務経験のある方が社内に1人もいない場合、投資助言・代理業への登録は不可
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IFA法人の収益源について      コレクト行政書士事務所                    特定行政書士   矢ノ下孝信 ◇IFA法人の主な3つの収益源   IFA法人の収益源としては、①顧客の取引手数料、②顧客の預かり資産(投資信託)からの管理報酬、③紹介料の三つが考えられます。  以下にそれぞれの詳細についてご紹介いたします(※数字については、一例であり、詳細な数字は実際とは異なる場合があります)。 ①顧客の取引手数料  業務提携先の証券会社のシステム利用料が発生する場合は、顧客から得た手数料収入のうち2~4割を業務提携先の証券会社に支払必要があります。 ②顧客の預かり資産(投資信託)からの管理報酬  顧客預かり資産の残高に対して0.5~2.0%程度が目安となります。  近年、IFAとの提携強化を進める証券会社の中には、取引手数料よりも、この顧客の預かり資産(投資信託)からの管理報酬の重視へと収益モデルを変更している証券会社もあるようです。 ③紹介料  不動産仲介業者等の他業種を顧客に紹介し、成約時に手数料の一部を紹介料として得ます。事業を経営している顧客に対しては、M&A仲介会社を紹介したり、相続等に詳しい士業を紹介し、そこから紹介料を得るビジネスモデルも存在します。  一般的に、この紹介料から得られる収益は、小さなものになりがちですが、顧客のニーズを満たすことができる紹介先を紹介できることは、顧客との間に長期的な関係を築くための一助となります。 ◇兼業を行っているIFA法人が行っている兼業ビジネスの例  IFA法人の中には兼業を行っている事業者も多数あります。ここでは、IFA法人が行っている兼業ビジネスの例をご紹介します。  金融庁が作成したフィナンシャルアドバイザー(IFA)に関する調査研究によれば次のような事例があげられています。 「投資助言業(ラップ口座フィー)、税理士・会計士事務所(税務・会計関連報酬)、保険代理店(保険関連収益)、FPサービス(FPフィー)、その他代理業・専門サービス(銀行代理業、確定拠出年金)等」(フィナンシャルアドバイザー(IFA)に関する調査研究より引用)
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【続報】金融経済教育推進機構認定アドバイザー(J-FLEC認定アドバイザー)の認定要件とJ-FLEC認定アドバイザーになることのメリットとデメリットについて      コレクト行政書士事務所                    特定行政書士   矢ノ下孝信 ◇概要  金融経済教育認定機構認定アドバイザー(以下J-FLEC認定アドバイザーと呼称)は、家計管理、ライフプラン、資産形成等に関する個別相談の実施やこれらに関する講義を行い、個々の状況に応じたアドバイスを提供する主体となることが期待され、新たに誕生した資格です。  J-FLEC認定アドバイザーに認定されるためには、金融経済教育推進機構(J-FLEC)に審査を申込、これに合格する必要があります。同認定は、個人を対象にしており、法人が認定を受けることはできませんのでご注意ください。  今回は、J-FLEC認定アドバイザーの認定要件とJ-FLEC認定アドバイザーになるメリットとデメリットについてご紹介します。 ◇J-FLEC認定アドバイザーに認定されるための資格及び業務経験の要件   認定アドバイザーに認定されるための資格要件及び業務経験は次のようになっています。ちなみに、下記の資格や業務経験以外でもJ-FLEC認定アドバイザーにふさわしいものであれば認められる余地があるそうです。 (1)資格要件 ・CFP、AFP、FP技能検定(2級以上) ・外務員(1種) ・証券アナリスト ・プライベートバンカー ・公認会計士 ・税理士 ・弁護士 ・司法書士 ・行政書士 ・社会保険労務士 ・消費生活相談員 ・消費生活アドバイザー ・DCプランナー(1級) ・住宅ローンアドバイザー ・銀行業務検定(税務2級) ・銀行業務検定(相続アドバイザー3級以上) ・銀行業務検定(年金アドバイザー3級以上 ) ・金融窓口サービス技能検定(1級) ・投資助言・代理業者 (2)業務経験 ・個人からのFP分野における相談・提案業務 ・個人からの公的年金・社会保険に係る相談 ・個人への対面による金融商品の提案・販売 ・個人への対面による保険契約の提案・販売 ・個人への不動産購入の資金計画作成・提案 ・個人への住宅ローンに係る審査・相談等 ・個人融資に係る審査・財務状況分析・相談等 ・個人に対する各種税務相談(確定申告・相続・遺言等) ・成年後見制度に
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  【解説】 投資助言・代理業の廃業手続きについて       コレクト行政書士事務所                    特定行政書士   矢ノ下孝信  これまで、本ブログでは、投資助言・代理業の登録に関する解説を行ってきましたが、今回は、投資助言・代理業の廃業手続きについて解説してみたいと思います。 ◇投資助言・代理業を廃業するために最低限必要な手続き  投資助言・代理業を廃業するために最低限必要な手続きは、次の①~③(※③については該当する事業者のみ必要)になります。  令和4年4月以降、行政手続きのオンライン実施が原則となったことを受けて、廃業のための廃止届出も金融庁電子申請・届出システムを通しての申請が必要です。 ①本店の所在地または主たる営業所を管轄する財務局・財務事務所に廃止届出を行う  本店の所在地または主たる営業所を管轄する財務局・財務事務所に金融商品取引業の廃止届出書、直近決算の貸借対照表の及び損益計算書の写し、顧客に対する債権債務の清算方法を記載した書面の三つの書面を提出します。 ②営業保証金の取戻承認申請  ②については、最初に営業保証金取戻承認申請書を提出し、これを受けて当局が6カ月間、当該事案について官報を行い、債権者等からの申立てが無かった場合は、投資助言・代理業者として開業した際に供託した営業保証金500万円が当該事業者に変換されます。 ③日本投資顧問業協会への大会届出の提出(※該当する事業者のみ)  日本投資顧問業協会に加入していた事業者は、協会への退会届及び金融商品取引業の廃止届出書の写しを協会に提出する必要があります。 ◇投資助言・代理業者が廃業時に特に注意すべき点  前述した①~③の手続き以外に投資助言・代理業者が廃業時に特に注意すべき点についていくつかご紹介します。 ④債権・債務関係の確認  投資助言・代理業を廃業する際には、顧客や取引関係のある業者との間に債権・債務がないかを確認する必要があります。  特に、廃業予定の事業者が債務を負っている場合は、前述した②の手続きにも影響しますので、十分な確認が必要です。  また、顧客から顧問料等を受け取っている場合、廃業するタイミングによっては、顧問料の返還が生じることも考えられますので、この点の確認も必要となります。 ⑤顧客の個人情報の保護  この点は、④とも関係しますが、廃業時
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【解説】IFA業界への参入傾向について コレクト行政書士事務所                    特定行政書士   矢ノ下孝信 ◇近年のIFA業界への参入傾向とは?  近年のIFA業界への参入の傾向としては、保険代理店業や不動産業を始めとした金融商品と既存の取扱業務との親和性の高い業界からの参入に加えて、相続に関連する業務等を扱う士業からの参入も増えています。  このように新規参入が続く、IFA業界ですが、IFAの存在が社会に浸透している欧米と比べれば、まだ日本におけるIFAの知名度は高くなく、マーケットはいまだ未成熟であり、新規参入の余地も十分です。  さらに、2024年1月から新NISA制度が開始されたことから日本社会の投資への関心の高まりは、続くものと考えられ、IFA業界への参入の機運は引き続き高まっていくものと思われます。  IFA事業者数は、2022年6月時点の642社から2024年5月時点で686社へと増加しており、経済情勢の大きな変化が発生しない限り、今後もこの増加傾向が続きそうです。  一方、このIFA事業者の増加傾向を受けて大手証券会社を中心に業務委託契約を希望する事業者に対する選別を厳格化する傾向が見受けられます。そのため、金融業界での実務経験者が社内にいない事業者が新規で大手証券会社から業務委託契約を締結してIFA事業者として新規の登録を行うのは非常に困難となっています。  これから、IFA事業者として新規登録をお考えの場合は、選別を厳格化している大手証券会社ではなく、積極的に業務委託契約を締結できるIFA事業者を探している小規模な証券会社と業務委託契約を締結することを検討するのも良いかもしれません。 ◇IFA業界へ参入する際、新たに法人を設立する必要があるのか?  以前、ご紹介したように、IFAとして開業するためには、基本的には、法人である必要があるのですが(※数は少ないですが、個人事業主としてIFA業界に参入しておられる方も存在します)、IFA業界へ参入を希望する方から、「現在の法人とは別に新たに法人を設立する必要はあるのか?」というご質問を受けたことがあります。  基本的に法令における規制等が無い場合は、現在の法人のまま、証券会社等との間で金融商品仲介業業務委託基本契約を締結した上で、金融商品仲介業者として登録することで、IFA業界に