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助言対象を絞った投資助言業(例:つみたてNISAやiDeCoにおける投資可能商品に限定)について ◇助言対象を絞った投資助言業の概要  金融庁では、助言対象を絞った投資助言業(例:つみたてNISAやiDeCoにおける投資可能商品に限定)の登録要件の緩和が、必要な監督体制の整備と併せて検討される予定となっています(金融庁「金融審議会 市場制度ワーキング・グループ顧客本位タスクフォース中間報告(案)」2022年11月より引用)。  上述の登録要件の緩和が行われれば、従来の投資助言業の登録要件を満たすことができない事業者でも、将来的には、助言対象を絞った投資助言業への登録であれば可能となるかもしれません。  仮に、助言対象を絞った投資助言業が解禁された場合、FP事業者などの顧客の資産形成の支援を行っている事業者や相続関連の業務を行っている事業者等の参入が予想されます。こうした事業者が参入することで、助言対象を絞った投資助言業が助言対象としているつみたてNISAやiDeCoにおける投資可能商品への助言を必要とする個人投資家の相談先の選択肢が増加し、個人の資産形成にプラスの影響を与えることが期待できそうです。 ◇金融経済教育推進機構の成立とその後の進展  2023年11月20日、衆院本会議にて金融経済教育推進機構の成立に関する法案が可決・成立しました。  同機構は、金融経済教育の教材・コンテンツの作成、中立的なアドバイザー(以下認定アドバイザーと表記)の認定・教育等を目的として認可法人として2024年4月に設立されました。同機構の正式な活動開始は、2024年8月から予定されています。  認定アドバイザーは、家計管理、ライフプラン、資産形成等に関する個別相談を実施し、個々の状況に応じたアドバイスを提供する主体となることが期待されているようです。  この認定アドバイザー制度の認定基準の制定と共に、助言対象を絞った助言業に関する議論が進展することが望まれますが、助言対象を絞った助言業については現時点では未定であり、今後の議論の進展が待たれます。
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アメリカにおけるイーサリアムの現物ETF承認が投資助言・代理業とIFAビジネスにもたらす影響  今回はアメリカにおけるイーサリアムの現物ETF承認が投資助言・代理業とIFAビジネスにもたらす影響について解説します。 ◇出来事の概要  イーサリアムの現物ETFについて、2024年5月23日にアメリカ証券取引委員会(SEC)が重要な書類を承認しました。この出来事により、イーサリアムスポットETFがアメリアで利用可能になる方向性が示されました。ただし、実際にイーサリアムの現物ETFが市場で取引されるまでには、規制当局のさらなる承認が必要となります。  今回のイーサリアムの現物ETF承認は、以前承認された ビットコインETF と併せて、暗号資産投資が投機から信頼できる投資対象資産として地位を確立するための大きな一歩となりそうです。 ◇イーサリアムの現物ETF承認が投資助言業とIFAビジネスにもたらす影響  今回のイーサリアムの現物ETF承認を受けて、投資家の暗号資産投資へのニーズはますます高まりそうです。  2024年5月現在、日本の証券取引所での暗号資産ETFの取り扱いはありません。また、日本の証券会社が海外の取引所に上場している暗号資産ETFを取り扱うことも現状では行われていないようです。  このように日本の証券取引所では、暗号資産ETFの取り扱いはありませんが、海外の動向を受けて、日本でも将来的には、暗号資産ETFが上場されるかもしれません。  前述したように、IFA事業者の場合は、日本の証券会社が暗号資産ETFを取り扱っていないため、現状では、直接的なビジネス上での関わりは生じないと思いますが、投資助言・代理業者が顧客から暗号資産投資についての相談をうけた場合は、現物の暗号資産への投資か海外のETFに投資することを助言することになります。  最後に、顧客に暗号資産投資に関するアドバイスをする際の注意点についてですが、ビットコイン等の現物暗号資産に対する助言につきましては、2024年5月現在、投資助言・代理業への登録は必要ありません。  加えて、暗号資産の信用取引に関する助言も、投資助言・代理業に該当しないとされています。  ただし、暗号資産の信用取引に関する助言を行う場合でも、当該助言が、信用取引に対する助言なのかデリバティブ取引に対する助言なのかによって、投資助言
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資産運用立国と顧客の立場に立ったアドバイザーが金融相談ビジネスにもたらす可能性について ◇資産運用立国の概要  日本政府は、家計金融資産の半分以上を占める現預金が投資に向かい、企業価値向上の恩恵が家計に還元されることで、更なる投資や消費に繋がる成長と分配の好循環を実現することが重要であるとしています。  そこで、政府は、家計に向けた取組、金融商品の販売会社等に向けた取組、企業や金融・資本市場に向けた取組を推進し、資産運用業の改革、アセットオーナーシップの改革、成長資金の供給と運用対象の多様化、スチュワード活動の実質化、対外情報発信・コミュニケーションの強化を柱とする資産運用立国実現プランを策定しています。  この資産運用立国のプランの中で、投資助言・代理業やIFA(金融商品仲介業)に特に関連が深いのは、家計に向けた取組の具体化ですが、この取組では、①NISAの抜本的拡充・恒久化(2024年1月から開始)、②顧客の立場に立ったアドバイザーの普及・促進に向けた検討、③金融経済教育の充実の三つの施策が進められています。  ①については、予定通り2024年1月から新NISA制度が開始され、②、③については、具体的な担い手として期待される認定アドバイザーの認定を担う予定の2024年4月に金融経済教育推進機構が設立され、同機構は、2024年8月から本格始動する予定です。 ◇顧客の立場に立ったアドバイザーの普及・促進がもたらすビジネス上のチャンスについて  資産運用立国において、政府が顧客の立場に立ったアドバイザーの普及・促進に向けた検討を行っていることを受け、投資助言・代理業者とIFA(金融商品仲介業者)には、次のようなビジネス上のチャンスがもたらされると思われます。 ①顧客の資産形成に関するアドバイスの需要が増加することで、投資助言・代理業やIFAに対する需要が高まる可能性がある。 ②顧客の立場に立ったアドバイザーの普及・促進により、顧客の立場に立つことを意識して誠実に業務を行っている投資助言・代理業者やIFAが、この市場での競争力をより高める可能性がある。 ③金融経済教育の充実が掲げられていることから、この分野から潜在的な顧客への接触を図る機会が拡大すると考えられ、営業のチャンスも増大することが期待できる。  以上のようなビジネス上のチャンスがもたらされることで、投資助言・
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投資助言・代理業に小規模法人が登録を目指す際の注意点 ◇投資助言・代理業に小規模法人が登録を目指す際に落とし穴となる点  以前にもご紹介しましたが、法人(株式会社、合名会社、合資会社、合同会社)で登録する場合は、常務に従事する役員にも、金商法等の関連諸規制や監督指針で示している経営管理の着眼点の内容を理解し、実行するに足る知識・経験、及び金融商品取引業の公正かつ的確な遂行に必要となるコンプライアンス及びリスク管理に関する十分な知識を有することが求められます。  そのため、常務に従事する役員には、金融商品取引業者又は登録金融機関で十分な職務経験を有する方が1名以上必要となり、法人全体では、この常務に従事する役員を含めて2名以上金融商品取引業又は登録金融機関に勤務経験のある方が必要です。  小規模法人の場合、金融商品取引業者又は登録金融機関での職務経験のある常務に従事する役員を確保できず、役員の人的要件を満たせないことから登録できなくなるという事例が存在します。  このような事例では、行おうとする業務にもよりますが、法人としての登録ではなく、個人事業主としての登録であれば登録できる可能性があります。 ◇個人事業主が法人として投資助言・代理業の登録を再度行う際の注意点  一方、個人事業主として投資助言・代理業に登録をした場合、ビジネスが軌道に乗り、法人として投資助言・代理業に登録できる人的要件を満たせるようになり、法人として投資助言・代理業への登録を行いたいと考えた際、個人事業主としての登録を引き継ぐことはできず、法人として一から登録を行う必要があるため、これにともなう費用が再度必要になるというデメリットも生じてしまいます。  ただし、このような場合でも、個人事業主として顧客等との間に締結していた契約を法人として引き継ぐことは可能です。 関連ページ ・ 【2024年版】投資助言・代理業に登録するための人的要件まとめ
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金融経済教育推進機構と認定アドバイザーの条件について ◇金融経済教育推進機構と認定アドバイザーの概要  2023年11月20日の衆院本会議にて金融経済教育推進機構の成立に関する法案が可決・成立しました。  同機構は、金融経済教育の教材・コンテンツの作成、中立的なアドバイザー(以下認定アドバイザーと表記)の認定・教育等を目的として認可法人として2024年4月に設立され、同年8月から本格的に稼働する予定です。  認定アドバイザーは、家計管理、ライフプラン、資産形成等に関する個別相談を実施し、個々の状況に応じたアドバイスを提供する主体となることが期待されているようです。  認定基準は、まだ具体的な基準を同機構が示していないので現時点で明言することは困難ですが、金融庁が示した案では、「家計管理、生活設計、NISA・iDeCo等の資産形成制度、金融商品・サービス、消費生活相談等に関するアドバイスを提供するための有益な資格(CFP、AFP、FP技能検定2級以上、外務員(1種)、弁護士等の士業、消費者生活相談員など)及び一定の業務経験を有すること」としています。  仮にこの金融庁が提示した案に基づいた認定基準となった場合、金融機関に勤務している者や金融機関から報酬等を得ている者は除外されることになりますので、IFA事業者は除外される可能性が高いと思われます。  一方、金融商品を販売する金融事業を兼業していないことや顧客からのみ報酬を得ていることといった基準を満たしている場合、FPはほぼ確実に認定されると思われますし、投資助言業者も条件を満たせれば、認定アドバイザーとして認定される可能性があります。  ここまで金経済教育推進機構と認定アドバイザーについてご紹介してきましたが、同機構の成立に関する法案が可決・成立したことを受け、以前から議論されてきた助言対象を絞った(例えば、つみたてNISAやiDeCoに限定)投資助言業の議論の具体化も期待されているところですが、制度の具体化については現時点では未定であり、今後の議論の進展が待たれます。  助言対象を絞った投資助言業についての議論の進展があった場合、当ブログでも取り上げる予定です。 ◇金融経済教育推進機構が正式に設立されました  金融経済教育推進機構が2024年4月に予定通り設立されました。同機構の内部規定事業計画等の詳細は、同年4月
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IFAとして開業を希望する事業者が証券会社を選ぶ際のポイント ◇ 金融商品仲介業業務委託基本契約の締結先の証券会社等を選ぶ際のポイント  金融商品仲介業業務委託基本契約の締結先の証券会社等を選ぶ際には、次のようなポイントを確認する必要があります。 ①自社の理念や方向性との親和性 ②取扱金融商品の種類の豊富さ(自社の対象顧客が望む金融商品を扱っているかが特に重要) ③IFAへの支援体制(IFAに提供されるシステムは使いやすそうか、問い合わせへのレスポンスは早いか等) ④IFA側の要望(特定の金融商品を扱ってほしい等)が採用される余地はあるか ⑤金融商品仲介業業務委託基本契約締結時に初期費用はかかるか?契約締結後にかかる費用はあるか?システム利用料はかかるか? ⑥IFAとの連携に積極的か(自社の取扱い金融商品を販売する販路としてのIFAの位置付けを確認する必要あり) ※証券会社によっては、経営方針の変化によってIFAとの連携の重要度を低下させる場合も考えられるので、その証券会社の長期的な経営方針をよく確認しておく必要あり ⑦金融機関勤務経験者以外にも門戸を積極的に開いているか ◇その他のポイント ①証券外務員一種試験合格者のみを求めている証券会社等もあるため、自社の試験合格者が二種試験合格者のみの場合は、募集要項をよく確認する必要あり ②自社の役職員に特定の証券会社と何らかの接点がある者がいる場合は、その証券会社等との連携がしやすくなる可能性もあるため、まずは、この可能性を探ってみる 関連ページ ・ IFAの概要と今後の展望
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 【入門】投資助言・代理業と金融ADR制度について:①一般社団法人日本投資顧問業協会に加入する場合と②弁護士会紛争解決センターを利用する場合 ①一般社団法人日本投資顧問業協会に加入する場合の考慮事項と加入手続きの流れ  以下では、一般社団法人日本投資顧問業協会に加入する場合の考慮事項と加入手続きの流れについて解説していきます。 ◇日本投資顧問業協会へ加入する場合の考慮事項  投資助言・代理業者は、一般社団法人日本投資顧問業協会への加入か弁護士会紛争解決センターへの加入が必要となりますが、登録審査に際して、両社の間に基本的には、優劣はありません。  一方、日本投資顧問業協会に加入した場合、各種変更届や自主規制ルール順守状況等調査票を年次で提出する必要があります。さらに、加入業者に対する不定期の監査が実施されるなどの事務的な負担も生じます。  しかし、日本投資顧問業協会では、コンプライアンス研修等の各種研修を実施しており、業務運営に資する各種の情報等も得ることができます。加えて投資顧問経協会に加入することで社会的な信用を獲得できるなどのメリットも存在します。  投資助言・代理業への登録時の注意点としては、日本投資顧問業協会への加入では、加入を希望する事業者に対して、社内規定や契約締結前交付書面等に関する審査や面談が行われますので、加入に際して弁護士会紛争解決センターへ加入する場合よりも時間がかかります。 ◇日本投資顧問業協会への加入手続きの流れ  日本投資顧問業協会への加入手続きの流れは次のようになります。 ①登録後、協会に対して入会申込書等の必要書類を提出 入会申込書及び以下の書類を提出する必要があります ・定款の写し ・登記事項証明書の写し ・登録申請書及び方法を記載した書面 ・業務に係る人的構成及び組織等の業務執行体制を記載した書面 ・役員及び政令第15条の4で定める使用人の履歴書 ・業務内容等が記載されたパンフレット・会社案内など ・その他協会が必要と認める書類… 直近の事業報告書 契約締結前交付書面 新規・登録申請者の概要についての写し 法人関係情報等取扱規定 役職員自己取引規定 コンプライアンスに関するチェックシート(日本投資顧問業協会HPにて入手可)など ・入会申込書(日本投資顧問業協会HPにて入手可) ②書類の内容等について質問や補正依頼等が、協会より来