【解説】投資助言・代理業と他の業務を兼業する場合の注意点 

                                                                                コレクト行政書士事務所
                   特定行政書士  矢ノ下孝信






◇投資助言・代理業と他の業務の兼業は可能か?

 投資に関する助言の提供を主な業務とする投資助言・代理業は、その業務範囲が限られ、他の業務の実施による財産的基礎の悪化を防ぐべき必要性が相対的に高くないと考えられることから、他の業務との兼業を禁止されていません(金商法35条の2第1項)。
 しかし、兼業する他の業務に関して何らかの業務範囲規制が課せられている場合、その規制に服することとなります(金商法35条の2第2項)。
 加えて、公益に反すると認められる業務も行うことができません(金商法29条の4第1項1号ニ、52条1項1号)。

◇投資助言・代理業と他の業務を兼業する場合の情報管理上の注意点

(1)同じオフィスで業務を行う際の注意点

 小規模な事業者の場合、投資助言・代理業を行う部門と他の業務を行う部門が同じオフィスで業務を行うことが多いかと思われます。
 このような場合は、法人関係情報の漏洩によるインサイダー取引事例の発生を防ぐためのファイアウォール(部門間の交流を意図的に遮断すること)の構築や顧客情報を個人情報保護に関する関係諸法令(個人情報の保護に関する法律、個人情報の保護に関する法律施行令、個人情報の保護に関する法律施行規則及び個人情報の保護に関する基本方針、関係法令並びに金融分野における個人情報保護ガイドライン)に基づき適切に管理するのが困難になることが予想されます。
 このような場合は、特にオフィス内におけるパーテーションの使用や電話、郵便、インターネット回線の他の業務との分離の徹底をより厳格に行う必要があります。

(2)役職員に業務を兼業させたいと考える場合の注意点

 小規模な事業者の場合は、役職員に投資助言・代理業と他の業務を兼業させたいと考えると思いますが、インサイダー取引事例の発生防止や顧客情報保護の観点から基本的には兼業させずに業務を分離した方が良いとされていますが、絶対に兼業できないというわけではないため、この点はケースバイケースで判断していくことになります。

◇投資助言・代理業とIFA(金融商品仲介業)を兼業したいと考えている場合の注意点

 以前、お客様から当事務所に「投資助言・代理業とIFA(金融商品仲介業)を兼業したいと考えているのですが、可能でしょうか?」というご相談をいただいたことがありました。ご相談をいただいたお客様のように兼業を考えておられる方もいらっしゃると思い、この兼業について以下では考えてみたいと思います。
 端的に申し上げますと投資助言・代理業とIFA(金融商品仲介業)の兼業は、制度的には可能です。しかし、投資に関する助言を提供する投資助言・代理業と金融商品の販売を行うIFA(金融商品仲介業)を兼業する場合、顧客との間に利益相反が発生しやすいことからこの両事業の兼業を行う場合は、高度の弊害防止措置が求められ、登録はどちらか一方の選択をする場合に比べて非常に困難となっています。
 高度の弊害防止措置の導入には、追加の人件費等の費用面の負担に加え、実際の運用面での困難さもあることから、投資助言・代理業とIFA(金融商品仲介業)の兼業はあまりお勧めいたしません。自社の今後のビジネス展開を考えながら、投資助言・代理業かIFA(金融商品仲介業)のいずれかを選択していただければと思います。

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