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【改訂版】 投資助言・代理業に登録する際の職務経験の要件:②分析・助言担当者  投資助言・代理業に登録するためには、「有価証券の価値等又は金融商品の価値等の分析に基づく投資判断の助言を行う者として、有価証券や金融商品の価値等に関する知識及び経験を有する者が確保されていること」(「金融商品取引業者向けの総合的な監督指針Ⅶ. 監督上評価項目と諸手続(投資助言・代理業)体制審査の項目より引用)が必要です。  分析・助言担当者となる役員や使用人には、金融商品の価値等に関する知識や経験が求められます。また、登録の際には、次ような職務経験や能力が求められます。 ①登録を予定している会社での助言対象金融商品に対する最低3年程度の実務経験が必要となります。 ②行おうとするビジネスの内容や規模にもよりますが、例外的に金融商品取引業者での実務経験が十分でない場合でも、保有資格等で業務に関する知識を証明することで実務経験の不足を補うことができる場合もあります。  「金融機関のリテール部門での職務経験はあるのですが、この職務経験は、分析・助言担当者としての経験として認められるでしょうか?」というご質問をいただいたことがありますが、リテール部門での経験は、主に営業に関する職務経験になりますので、この職務経験のみでは、分析・助言担当者に求められる職務経験として認められずらいのが現状です。  関連する論点として、リテール部門での職務経験をお持ちの方は、証券外務員一種又は二種資格を保有しておられることと思います。かつては、証券外務員資格を保有している場合は、実務経験が無い方でも分析助言・担当者に就任できていたようですが、投資助言・代理業の登録自体が非常に困難となり、人的要件においても実務経験が何よりも重視される現在では、証券外務員資格を保有しているだけでは、主たる分析・助言担当者として認められるのは非常に困難となっています。  加えて、近年よくいただくご相談としては、個人投資家として経験を積まれた方が、個人投資家としての経験があるので、分析・助言担当者になれないかというご相談をいただくことがあるのですが、こうした方の場合も、個人投資家としての経験のみでは、分析・助言担当者に求められる職務経験とは認められません。  このような方の場合も、分析・助言担当者の職務経験として認められるためには、金融商品取
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投資助言・代理業に該当する可能性のある業務と該当しない業務  今回は投資助言・代理業に該当する可能性のある業務と該当しない業務についてご紹介します。 ◇投資助言・代理業に該当する可能性のある業務  次のような業務は投資助言・代理業に該当する可能性があります。 ①株式・債権、投資信託などの一般的な有価証券や有価証券指標は、有償で有価証券の価値等(値動き予想)の助言をするだけで投資助言・代理業に該当します。 →無償の場合は該当しませんが、このような場合でもブログやウェブサイト等において、広告主などから報酬を得ている場合は、投資助言・代理業に該当するとみなされる可能性がありますのでご注意ください。 ②暗号資産については、売買ポイントにおける投資判断(売買等)を具体的にアドバイスした場合のみ規制対象となります。 →なお、いわゆるセキュリティートークン(※ブロックチェーンで管理された、デジタル化された有価証券のこと)に関しては、暗号資産ではなく電子記録移転権利として、有価証券と位置付けられているので、有価証券の価値等(値動き予想)の助言だけで、投資助言・代理業に該当することとなるためご注意ください。 ③株式等の有価証券の価値等に対する言及、FX等のデリバティブ取引については、売買等の投資判断に関する言及を行うオンラインサロンを運営する場合は、投資助言・代理業に該当します。 ④投資分析ツール等のコンピューターソフトウェアを販売する場合、当該ソフトウェアの利用に当たり、販売業者等から継続的に投資情報に係わるデータやその他のサポートを受ける必要がある場合は、投資助言・代理業に該当する可能性があります。 ⑤直接販売業者等に購入を申し込まなければ購入することができないレポート等の販売をする業務は、投資助言・代理業に該当する可能性があります。 ◇投資助言・代理業に該当しない業務  次のような業務は一般的に投資助言・代理業に該当しないとされています。  ①有価証券指標に関連しないFX等のデリバティブ取引では、値動き予想を配信しただけでは、投資助言・代理業の登録は原則不要です。 →あくまで、売買ポイントにおける投資判断(売買等)を具体的にアドバイスした場合は規制対象となり、登録が必要(※取引の内容及び時期についての判断の提供が投資助言・代理業ということになります)。 ②新聞、雑誌、書籍等の販
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【改訂版】投資助言・代理業に必要な人的要件とは? ◇投資助言・代理業に登録している事業者数と近年の動向  投資助言・代理業に登録している事業者数は、金融庁の公表している資料によれば、2024年3月時点で990事業者となっており、過去5年間での事業者数の推移は、ほぼ横ばいでした。今後も登録事業者数は、多少の増減が予想されるものの1000事業者前後で推移するものと思われます。  新規登録をしている事業者の傾向としては、近年、金融庁が登録手続きを英語でも可としたことで、外資系運用会社等の資本と人材の豊富な事業者の新規登録も増えてきてきます。  一方、2023年以降は、規制当局が新規事業者の参入抑制方針を示しており、こうした方針を受け、投資助言・代理業への新規登録は、非常に困難となっています。 ◇投資助言・代理業に必要な人的要件  投資助言・代理業の登録に必要な人的要件に関しては、お客様から最も多くいただくご質問の一つです。  必要な人的要件は、行おうとする業態により異なりますが、いかなる業態にも必要なのは、①経営者、②分析・助言担当者、③コンプライアンス担当者、④内部監査担当者の①~④になります。  このように書きますと最低でも4人は必要なのかと思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、例えば①経営者と②分析・助言担当者を同一人物が兼ねることもできます。従いまして、行おうとする業態によっては2人以下での登録も認められる余地があるということです。  では、実際に一人でビジネスをしている方が、①~④の全てを兼務して登録ができるかと申しますと、この方が行おうとしておられるビジネスが少数の投資経験豊富なクライアントを対象とする場合でも、投資助言・代理業を含めた金融商品取引業者に高度なコンプライアンス体制とリスク管理体制の整備が求められる現在では、極めて困難であると言わざるを得ません。  ①~④には、金融商品取引業者及び登録金融機関(証券会社以外で有価証券関連業の一部を行うことができる金融機関のこと)での実際の実務経験が必要になります。金融商品取引業者及び登録金融機関での実務経験のある方が社内に1人もいない場合、投資助言・代理業への登録は不可能となっているため、必ず、実務経験のある方を社内に最低でも1人は確保する必要があります。次回からは、①~④に必要な職務経験について順番に解説し
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助言対象を絞った投資助言業(例:つみたてNISAやiDeCoにおける投資可能商品に限定)について ◇助言対象を絞った投資助言業の概要  金融庁では、助言対象を絞った投資助言業(例:つみたてNISAやiDeCoにおける投資可能商品に限定)の登録要件の緩和が、必要な監督体制の整備と併せて検討される予定となっています(金融庁「金融審議会 市場制度ワーキング・グループ顧客本位タスクフォース中間報告(案)」2022年11月より引用)。  上述の登録要件の緩和が行われれば、従来の投資助言業の登録要件を満たすことができない事業者でも、将来的には、助言対象を絞った投資助言業への登録であれば可能となるかもしれません。  仮に、助言対象を絞った投資助言業が解禁された場合、FP事業者などの顧客の資産形成の支援を行っている事業者や相続関連の業務を行っている事業者等の参入が予想されます。こうした事業者が参入することで、助言対象を絞った投資助言業が助言対象としているつみたてNISAやiDeCoにおける投資可能商品への助言を必要とする個人投資家の相談先の選択肢が増加し、個人の資産形成にプラスの影響を与えることが期待できそうです。 ◇金融経済教育推進機構の成立とその後の進展  2023年11月20日、衆院本会議にて金融経済教育推進機構の成立に関する法案が可決・成立しました。  同機構は、金融経済教育の教材・コンテンツの作成、中立的なアドバイザー(以下認定アドバイザーと表記)の認定・教育等を目的として認可法人として2024年4月に設立されました。同機構の正式な活動開始は、2024年8月から予定されています。  認定アドバイザーは、家計管理、ライフプラン、資産形成等に関する個別相談を実施し、個々の状況に応じたアドバイスを提供する主体となることが期待されているようです。  この認定アドバイザー制度の認定基準の制定と共に、助言対象を絞った助言業に関する議論が進展することが望まれますが、助言対象を絞った助言業については現時点では未定であり、今後の議論の進展が待たれます。