【入門】 投資助言・代理業に登録する際の職務経験の要件:④内部監査担当者 内部監査担当者は、業務プロセスの評価、リスク管理の評価、内部統制の評価、情報システムの評価、法令遵守の評価、業務改善提言の作成を通して、投資助言・代理業者の行っている業務の適正性や法令順守状況を確認するための内部監査を行うことをその役割としています。さらに、監査結果を報告し、改善策の実施状況の確認も行います。 このような職務を行う内部監査担当者には、金融商品取引業における内部監査の知識や経験が求められると同時に、登録の際には、次のような職務経験や能力が求められます。 ①金融商品取引業者での監査役や内部監査担当者としての最低 3年 程度の実務経験が必要です。 ②金融商品取引業者以外での監査役や内部監査担当者としての実務経験がある場合は、顧問弁護士等の外部のサポート体制を構築することで登録を受けられる場合があります。 ③実務経験者を確保できない場合は、金融商品取引業の内部監査に関する知識や経験を有する外部の弁護士や行政書士に外部委託をすることで登録を受けることもできます。ただし、外部委託する場合でも、内部監査担当者は自社に置く必要があります。 投資助言・代理業への登録をご希望のお客様からご相談を受けた際、最も確保するのが困難なのがこの内部監査担当者になります。 加えて、外部のサポート体制を構築するために、サポートしてくれる専門家の数も限られ、内部監査体制を整えられず、登録を断念されるお客様が多いのが現状です。 コレクト行政書士事務所 特定行政書士 矢ノ下孝信 関連ページ ・ 投資助言・代理業に必要な人的要件とは? ・ 投資助言・代理業に登録する際の職務経験の要件:①経営者 ・ 投資助言・代理業に登録する際の職務経験の要件:②分析・助言担当者 ・ 投資助言・代理業に登録する際の職務経験の要件:③コンプライアンス担当者 ・ 投資助言・代理業に登録する際の職務経験の要件:⑤システム担当者が求められる事例 ・ 投資助言・代理業に登録するための人的要件まとめ
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【解説】投資助言・代理業と他の業務を兼業する場合の注意点 コレクト行政書士事務所 特定行政書士 矢ノ下孝信 ◇投資助言・代理業と他の業務の兼業は可能か? 投資に関する助言の提供を主な業務とする投資助言・代理業は、その業務範囲が限られ、他の業務の実施による財産的基礎の悪化を防ぐべき必要性が相対的に高くないと考えられることから、他の業務との兼業を禁止されていません(金商法35条の2第1項)。 しかし、兼業する他の業務に関して何らかの業務範囲規制が課せられている場合、その規制に服することとなります(金商法35条の2第2項)。 加えて、公益に反すると認められる業務も行うことができません(金商法29条の4第1項1号ニ、52条1項1号)。 ◇投資助言・代理業と他の業務を兼業する場合の情報管理上の注意点 (1)同じオフィスで業務を行う際の注意点 小規模な事業者の場合、投資助言・代理業を行う部門と他の業務を行う部門が同じオフィスで業務を行うことが多いかと思われます。 このような場合は、法人関係情報の漏洩によるインサイダー取引事例の発生を防ぐためのファイアウォール(部門間の交流を意図的に遮断すること)の構築や顧客情報を個人情報保護に関する関係諸法令(個人情報の保護に関する法律、個人情報の保護に関する法律施行令、個人情報の保護に関する法律施行規則及び個人情報の保護に関する基本方針、関係法令並びに金融分野における個人情報保護ガイドライン)に基づき適切に管理するのが困難になることが予想されます。 このような場合は、特にオフィス内におけるパーテーションの使用や電話、郵便、インターネット回線の他の業務との分離の徹底をより厳格に行う必要があります。 (2)役職員に業務を兼業させたいと考える場合の注意点 小規模な事業者の場合は、役職員に投資助言・代理業と他の業務を兼業させたいと考えると思いますが、インサイダー取引事例の発生防止や顧客情報保護の観点から基本的には兼業させずに業務を分離した方が良いとされていますが、絶対に兼業できないというわけではないため、この点はケースバイケースで判断
【改訂版】IFA(金融商品仲介業者)に登録するための条件と登録するまでの過程 ◇IFA(金融商品仲介業者)に登録するための条件 IFA(金融商品仲介業者)として登録するためには、まず、IFAとして活動することを希望する法人を募集している証券会社等との間に金融商品仲介業業務委託基本契約の締結をする必要があります。 証券会社等の募集要件は、各証券会社等で異なりますが、①法人であること、②2名以上の一種又は二種証券外務員試験合格者がIFA業務に従事できることを募集条件にしている証券会社等が多いです。 ただし、②の部分については、2名以上の証券外務員一種試験合格者がIFA業務に従事できることを募集条件にしている証券会社等もありますので、よく募集要件を確認していただく必要があります。 ◇個人事業主はIFA(金融商品仲介業者)登録できないのか? 多くの証券会社は、コンプライアンス面の負担等を考慮して法人事業者のみと登録の前提となる業務委託契約を締結していますが、一部の証券会社は、個人事業主との間にも同契約を締結しています。 従いまして法人事業者に比べると登録事業者数は顕著に少なくなるものの、個人事業者がIFA(金融商品仲介業者)として登録し、ビジネスを行っている事例も存在します。 ◇登録するまでの過程 IFA(金融商品仲介業者)として登録するまでの過程を簡略化して①~④にまとめると①証券会社等の審査(書面審査、面談等)を受け、②審査合格後に証券会社等との間に金融商品仲介業業務委託基本契約を締結、③証券会社等が契約を締結したIFAとして活動することを希望する法人の財務局への金融商品仲介業の登録申請を代行、④金融商品仲介業への登録後にIFAとして営業開始となります。 実務的には、金融商品仲介業登録後に、証券業協会コードの取得や証券外務員試験合格者の証券外務員登録を完了した後に営業を開始することになります。一連の過程には、通常6カ月から1年程度の期間が必要となります。 たまに、金融商品仲介業者として登録後に、証券会社等と委託契約を締結すると理解しておられる方がおられますが、上述したように最初に証券会社等と委託契約を締結していただかないと金融商品仲介業者として登録すること自体が出来ませんのでご注意ください。 関連ページ 登録拒否要件
投資助言・代理業に登録するためのオフィス要件 ◇投資助言・代理業に登録するためのオフィスの要件とは? 投資助言・代理業に登録するためには、登録審査の過程において、座席の配置図等を含むオフィスの図面を提出することになります。そのため、オフィスについても投資助言・代理業者として適切な職務遂行をするための要件を満たす必要があります。 投資助言・代理業者としてのオフィスの要件を満たすには、次のような要件を満たしている必要があります。 ①当該事業者の従業員以外の第三者がみだりに立入ることができないよう施錠可能であること ② 適切な情報管理が担保されるための当該事業者が専用する部屋があること ③金商法36条の2第1項の規定(金融商品取引業者に対して、営業所・事務所における標識の掲示義務を課す規定)による標識の掲示を行える物件であること ①~③の要件を要約しますと施錠可能で、当該事業者が専用区画を確保できる物件であることが必要となります。 ◇レンタルオフィスは要件を満たせるか? 上述の①~③の要件を満たせればレンタルオフィスでも登録をすることは可能です。 一方、コワーキングスペースやバーチャルオフィスのみの場合は、オフィスとしての要件を満たしていないため登録することはできません。 ◇他の事業者とオフィスを共有することは可能か? 他の事業者とオフィスを共有する場合は、壁等(固定式パーテーションであれば壁等として認められる余地あり)での分離と施錠可能な専用区画を確保する必要があります。 加えて、顧客情報等の重要情報管理の必要性を満たすため、電話や郵便、インターネット回線も他の事業者のものとは分離する必要があります。
投資助言・代理業に登録するための資金面の要件 今回は、投資助言・代理業に登録するための資金面の要件についてご紹介します。 投資助言・代理業に登録するためには、以下のような登録免許税と営業保証金が必要になります。一方、法人の最低資本金要件は、投資助言・代理業では課されていません。 ◇登録免許税について 投資助言・代理業への登録申請時に、登録免許税15万円が必要になります。 この登録免許税の納付場所は、日本銀行、日本銀行歳入代理店、本郵便株式会社の各郵便局及び収納を行う税務署になります。 ちなみに、登録免許税納付書の税務署名は、登録を受けようとする財務局の所在地にする必要があります。 ◇営業保証金について 投資助言・代理に登録するためには、投資助言・代理業者として登録を完了した時、登録者の主たる営業所の最寄りの法務局に営業保証金として500万円を供託する必要があります。 営業保証金の供託後には、財務局・財務事務所へ供託の届出が必要となります。 この営業保証金は、投資助言・代理業者として登録期間中は、法務局に預け続ける必要がありますが、登録抹消後には、この供託金は、返還されることになります。 ◇営業保証金は現金以外でも可 営業保証金は、現金以外で供託することも可能です。具体的には、国債証券、地方債証券、政府保証債権、金融庁長官が指定した社債券その他の債権を営業補償金に充てることができます(金融商品取引法第31条の2、金融商品取引業等に関する内閣府令第29条)。 なお、有価証券の種類によっては、500万円を超える額面金額が必要となる場合があるため供託する前に事前に確認していただく必要があります(金融商品取引業等に関する内閣府令第30条)。
投資助言・代理業に該当する可能性のある業務と該当しない業務 今回は投資助言・代理業に該当する可能性のある業務と該当しない業務についてご紹介します。 ◇投資助言・代理業に該当する可能性のある業務 次のような業務は投資助言・代理業に該当する可能性があります。 ①株式・債権、投資信託などの一般的な有価証券や有価証券指標は、有償で有価証券の価値等(値動き予想)の助言をするだけで投資助言・代理業に該当します。 →無償の場合は該当しませんが、このような場合でもブログやウェブサイト等において、広告主などから報酬を得ている場合は、投資助言・代理業に該当するとみなされる可能性がありますのでご注意ください。 ②暗号資産については、売買ポイントにおける投資判断(売買等)を具体的にアドバイスした場合のみ規制対象となります。 →なお、いわゆるセキュリティートークン(※ブロックチェーンで管理された、デジタル化された有価証券のこと)に関しては、暗号資産ではなく電子記録移転権利として、有価証券と位置付けられているので、有価証券の価値等(値動き予想)の助言だけで、投資助言・代理業に該当することとなるためご注意ください。 ③株式等の有価証券の価値等に対する言及、FX等のデリバティブ取引については、売買等の投資判断に関する言及を行うオンラインサロンを運営する場合は、投資助言・代理業に該当します。 ④投資分析ツール等のコンピューターソフトウェアを販売する場合、当該ソフトウェアの利用に当たり、販売業者等から継続的に投資情報に係わるデータやその他のサポートを受ける必要がある場合は、投資助言・代理業に該当する可能性があります。 ⑤直接販売業者等に購入を申し込まなければ購入することができないレポート等の販売をする業務は、投資助言・代理業に該当する可能性があります。 ◇投資助言・代理業に該当しない業務 次のような業務は一般的に投資助言・代理業に該当しないとされています。 ①有価証券指標に関連しないFX等のデリバティブ取引では、値動き予想を配信しただけでは、投資助言・代理業の登録は原則不要です。 →あくまで、売買ポイントにおける投資判断(売買等)を具体的にアドバイスした場合は規制対象となり、登録が必要(※取引の内容及び時期についての判断の提供が投資助言・代理業ということになります)。 ②新聞、雑誌、書籍等の販
助言対象を絞った投資助言業(例:つみたてNISAやiDeCoにおける投資可能商品に限定)について ◇助言対象を絞った投資助言業の概要 金融庁では、助言対象を絞った投資助言業(例:つみたてNISAやiDeCoにおける投資可能商品に限定)の登録要件の緩和が、必要な監督体制の整備と併せて検討される予定となっています(金融庁「金融審議会 市場制度ワーキング・グループ顧客本位タスクフォース中間報告(案)」2022年11月より引用)。 上述の登録要件の緩和が行われれば、従来の投資助言業の登録要件を満たすことができない事業者でも、将来的には、助言対象を絞った投資助言業への登録であれば可能となるかもしれません。 仮に、助言対象を絞った投資助言業が解禁された場合、FP事業者などの顧客の資産形成の支援を行っている事業者や相続関連の業務を行っている事業者等の参入が予想されます。こうした事業者が参入することで、助言対象を絞った投資助言業が助言対象としているつみたてNISAやiDeCoにおける投資可能商品への助言を必要とする個人投資家の相談先の選択肢が増加し、個人の資産形成にプラスの影響を与えることが期待できそうです。 ◇金融経済教育推進機構の成立とその後の進展 2023年11月20日、衆院本会議にて金融経済教育推進機構の成立に関する法案が可決・成立しました。 同機構は、金融経済教育の教材・コンテンツの作成、中立的なアドバイザー(以下認定アドバイザーと表記)の認定・教育等を目的として認可法人として2024年4月に設立されました。同機構の正式な活動開始は、2024年8月から予定されています。 認定アドバイザーは、家計管理、ライフプラン、資産形成等に関する個別相談を実施し、個々の状況に応じたアドバイスを提供する主体となることが期待されているようです。 この認定アドバイザー制度の認定基準の制定と共に、助言対象を絞った助言業に関する議論が進展することが望まれますが、助言対象を絞った助言業については現時点では未定であり、今後の議論の進展が待たれます。
アメリカにおけるイーサリアムの現物ETF承認が投資助言・代理業とIFAビジネスにもたらす影響 今回はアメリカにおけるイーサリアムの現物ETF承認が投資助言・代理業とIFAビジネスにもたらす影響について解説します。 ◇出来事の概要 イーサリアムの現物ETFについて、2024年5月23日にアメリカ証券取引委員会(SEC)が重要な書類を承認しました。この出来事により、イーサリアムスポットETFがアメリアで利用可能になる方向性が示されました。ただし、実際にイーサリアムの現物ETFが市場で取引されるまでには、規制当局のさらなる承認が必要となります。 今回のイーサリアムの現物ETF承認は、以前承認された ビットコインETF と併せて、暗号資産投資が投機から信頼できる投資対象資産として地位を確立するための大きな一歩となりそうです。 ◇イーサリアムの現物ETF承認が投資助言業とIFAビジネスにもたらす影響 今回のイーサリアムの現物ETF承認を受けて、投資家の暗号資産投資へのニーズはますます高まりそうです。 2024年5月現在、日本の証券取引所での暗号資産ETFの取り扱いはありません。また、日本の証券会社が海外の取引所に上場している暗号資産ETFを取り扱うことも現状では行われていないようです。 このように日本の証券取引所では、暗号資産ETFの取り扱いはありませんが、海外の動向を受けて、日本でも将来的には、暗号資産ETFが上場されるかもしれません。 前述したように、IFA事業者の場合は、日本の証券会社が暗号資産ETFを取り扱っていないため、現状では、直接的なビジネス上での関わりは生じないと思いますが、投資助言・代理業者が顧客から暗号資産投資についての相談をうけた場合は、現物の暗号資産への投資か海外のETFに投資することを助言することになります。 最後に、顧客に暗号資産投資に関するアドバイスをする際の注意点についてですが、ビットコイン等の現物暗号資産に対する助言につきましては、2024年5月現在、投資助言・代理業への登録は必要ありません。 加えて、暗号資産の信用取引に関する助言も、投資助言・代理業に該当しないとされています。 ただし、暗号資産の信用取引に関する助言を行う場合でも、当該助言が、信用取引に対する助言なのかデリバティブ取引に対する助言なのかによって、投資助言